2013年7月28日日曜日

生後87日目 見知らぬお母さんへ

この内容の記事を書くのには迷いがあった。伝えたいことがその方へ伝わるかどうかもよくわからないし、これから口唇口蓋裂のお子さんを出産されようとしている多くの方に不安を与えるのではないかとも思うからだ。しかし、赤ちゃんのためにも、その方に少しでも元気になっていただきたいと思うから、あえて書かせていただく。

この記事を書くきっかけは昨日の記事への、こちらのコメントだ。
実家の近所のお孫さんが口唇口蓋裂があるようです。
先日その子の曾祖母が私の実家に遊びに来られ「下の孫に兎口の子が生まれたようだ。生まれるま で分からなかったもんだから、両家の祖父母は驚いて嫁さんを責めたらしい。嫁さんは病んでしまって自分はまだ一度もひ孫を見せてもらっていない。」と寂し そうに話しておられました。昔から兎口は生まれるし、純粋に可愛いひ孫に逢いたい気持ちだそうです。
何ということか。お嫁さんの心情を思うと胸が痛む。そのお嫁さんに向けて、届くかどうかわからないが、私なりのメッセージを書く。

お母さんへ

御出産おめでとうございます。生まれたのは男の子でしょうか、女の子でしょうか。お乳は飲めていますか。 口の中に潰瘍はできなかったでしょうか。ホッツ床は着けられたでしょうか。元気に泣きますか。体重は増えていますか。

最初のお子さんでしょうか。それとも弟くんか妹ちゃんでしょうか。生まれるのを楽しみにされていたでしょう。胎動を感じては喜び、お腹の赤ちゃんに早く会いたいねと語りかけていましたよね。ベビー服やベビーカーやチャイルドシートを準備して、それを使うところをイメージしたり、名前を御主人と何日も考えたりしたのを覚えてますよね。

悪阻はひどくなかったですか。マタニティブルーになったかもしれませんね。お産は大変だったでしょう。でも乗り越えれば可愛い赤ちゃんに会える。御主人に抱かせてあげられる。御両親に孫の顔を見せられる。その一心で耐えてこられたと思います。

分娩室で生まれた赤ちゃんに口唇口蓋裂があると知らされた時はショックだったと思います。「まさか私の赤ちゃんが?、何故???、何が悪かったの???」・・・と。

私達の息子も口唇口蓋裂です。妊娠20週の頃に産科のお医者様に教えて頂きました。それから出産までの5箇月間、妻とともに準備をしてきました。まず病気について本を買って読み、お医者様の話を聞きました。そして妻と私の身内や親友に少しずつ、赤ちゃんに口唇口蓋裂があることを伝えました。同時に、長期間かかるけれど手術をすれば綺麗に治ること、日本人では500人に1人の比較的高い確率で生まれること、原因はわかっておらず、多くの人が持っている遺伝的要因に他の環境的要素が絡みあって、ほぼ「偶然に」発症すること。そんなことを伝えて、それぞれの両親や兄弟姉妹に時間を掛けて理解してもらいました。

お腹の子に障害があるとわかったとき、自分達の心の準備や、身内の理解を得るためには、長い期間が必要です。その期間がなかったのですから、貴方や御主人がショックを受け、途方に暮れるのは当然です。それでも、貴方は我が子を受け入れ、産後の辛い体で歯を食いしばって頑張っておられます。それだけで十分です。

御両親や義両親も、全く心の準備ができていなくて、ただただ驚いてしまったのです。御主人の御祖母様のように知識と理解がある方ばかりではありません。口唇口蓋裂という何やら恐ろしい字面から、貴方が妊娠中に、何か胎児に影響するようなことをしたのではないかと短絡的に考えてしまったとしても、 しかたのないことだったかもしれません。でも、貴方がそんなことをするはずがないということは、周囲の多くの方が御存知でしょう。

御主人は育児やお子さんの通院を手伝ってくださいますか。貴方のことを気遣ってくれますか。誰か悩みを打ち明けられる方は周りにおられますか。貴方の大事な赤ちゃんを立派に育てるためには、多くの人の助けが必要です。そのために、口唇口蓋裂という病気への理解が拡がることが、とても大切なのです。このブログを書いている大きな理由の一つはそこにあります。

いずれ時間が経てば、最初の驚きも和らいできます。御両親も義両親もお孫さんが可愛くないはずがありません。ただ受け入れるのに時間がかかるのです。御理解のある御祖母様は曾孫に会いたいと心から願われていらっしゃいます。 

私と、このブログを読んでくださっている全ての皆さんが貴方を応援しています。

赤ちゃんの病気について周囲の理解が深まって、少しずつでも貴方の心が軽くなっていくことを願っています。








ばあちゃんに抱かれる息子を気にしていないフリのネコ
昨日の体重は6.7kg。

今日の予定は出産内祝を数箇所に配るくらい。これでほぼ終わりなのだが、ちょっと遅くなってしまったなぁ。

・・・

車で30分弱の叔母さん(私の母の妹)の家に内祝を持って行くと、お孫さん用にクッションを敷き詰めた部屋に、ベビー布団を用意していただいた。息子さんとお嫁さんとお子さんは、近くの海水浴場へ遊びに行って留守だった。

叔母さんの御主人が塵肺で亡くなってから、3年くらい経つが、こうして息子さん夫婦とお孫さんとネコと暮らしているので、寂しくはなさそうだ。

背中撫でてもいいニャ
叔母さんに直接、息子の口唇口蓋裂について説明した記憶はないが、最近はその場で説明するのにも慣れた。もっとも叔母さんは元看護師(ちなみに実の娘も、お嫁さんも看護師)。病気や障害のある子供には慣れている。

帰宅して昼食の後はのんびりタイム。妻と息子は寝室で寝ている。娘は勉強かな。

今週は木曜日に矯正歯科の受診と、土曜日に2回目の予防接種があるくらい。予防接種の日で息子はちょうど生後3箇月だ。この調子でいくとその頃には7.0kg近くになっていそうだ。



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13 件のコメント:

  1. あっちゃんママ2013/07/28 7:25:00

    私もクラッパさんと同じ気持ちです。あなたを応援しています!!!!
    私もまだ父方の祖母、祖父には話せていません。そぉいう考えが多少あるので…自分の大好きな家族に受け入れてもらえないほど辛いことはないですよね(;_;)私は娘の唇裂の手術が終わって落ち着いたら会ってもらおうと思います!ドキドキしますが。 もう一度、めっちゃ応援してます!!

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  2. エルモママです。

    私もクラッパさんとあっちゃんママさんと同じ気持ちです。
    私は出生前の妊娠30週くらいの時に、口唇口蓋裂の疑いの診断を受けました。その日の夜は、涙が止まらなかったのを覚えています。
    きっと生まれてから、知った時にはもっと驚き、動揺しましたよね。そして、家族。その大切な家族も、同じように動揺されたのでしょうね。
    今はまだ動揺されていて、あなたを責めてしまったのかもしれません。

    同じ口唇口蓋裂の子を持つ親として、今は本当にこの子が愛おしく、最初の手術まであと1か月。治ることはうれしくもありますが、少し淋しくもあります。今のお顔を忘れないように、たくさん写真をとってあげて。と先に手術をした先輩ママさんから言われました。

    今まだ受け入れられなくても、大丈夫です。家族にも、少しずつ少しずつ。私も応援してます。

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  3. 記事を読んですごく感動しました。
    私も妊娠24週で口唇口蓋裂の疑いと診断され、すごく落ち込みました。
    「なんでうちの子が?何が悪かったんだろう。」
    「まさか私と主人の子どもに障害があるわけない。」
    日中は仕事もしてたので笑ってましたが夜中もなかなか寝れず、口唇口蓋裂についてネットで検索する日々でした。
    Facebookを見て、知人の子どもが産まれる度落ち込みました。
    赤ちゃん産まれたらすぐ会わせてね!と言ってくれる友達にも、なかなか打ち明けられませんでした。
    毎回の検診でも「他に何か悪いところがあるんじゃないか」と不安で不安でたまりませんでした。
    でも、私の主人も両親も障害があるとわかっていても産まれるのをすごく楽しみにしてくれて、きれいに治してあげるからね!とお腹の子に言ってくれました。
    手術をする大学病院にいくと同じ口唇口蓋裂のお子さんが5~6人はいらっしゃって情報交換をしてすごく安心しました。
    口唇口蓋裂は治ります。不安や落ち込んでいるとお子さんにも伝わってしまいます。
    だからどうか前向きに、まずは口唇形成手術を目指してお子さんを元気に育ててくださいね!
    私も8月末の手術を目指して、毎日がんばります!

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  4. クラッパさんあたたかい記事をありがとうございます。

    先ほどですが、曾祖母のもとへお孫さんから電話があり、「正月には会いに連れて帰る」と嬉しい連絡が入ったそうです。
    息子のベビー用品もお礼を言っていたとの事でわざわざ教えてくれました。

    真相はわかりません。でも、このブログを読んだのではないのかな?と思っています。

    生まれてすぐは実家にも戻らず連絡しても繋がらなかったそうです。赤ちゃんは暑さのためか、ミルクがあまり飲めなかったのか脱水で入院したそうです。
    今は退院でき、サポートを受ける気持ちになっているようです。

    本当に良かったと思います。

    読んでいればご本人は自分の事とわかると思うので、申し訳ありませんが、この場をお借りして、一言「○美ちゃんご出産おめでとう!たくさんの皆様の応援が届いたかな?1人じゃないから大丈夫!!」

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  5. 読んでいて涙がでてきました。本当にお優しい方なのですね。

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    1. 千秋さん コメントありがとうございます。

      息子が口唇口蓋裂をもって生まれてきて、自分の気持ちがだいぶ変わったような気はしています。

      妻が文字通り血を吐きながらお腹で育てた息子。その息子を「口唇口蓋裂があっても産んでよかった」と思ってもらいたいと、生まれるまでそればかりを考えていました。だから他のお母さんにも、そう思ってほしいと・・・そんな感じです。

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  6. 当事者からすると
    親の「口唇口蓋裂があっても産んでよかった」と言う、ひとりよがりな思いより
    その子が大人になって「産んでくれてありがとう」
    と心から言える様に育てて欲しいです。


    「きれいに治る」か、そうでないかで
    普通に限りなく近く生きられるか、報われないまま終わるか
    全員が全員ではないですが、手術の結果で
    その子の人生が左右されます。

    そうでない私は、親の愛情も受けられませんでした。
    兄弟の中、一人だけ生まれた時の写真もない、アルバムも無い。

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    1. コメントありがとうございます。
      当事者様からのコメントはとても参考になります。

      望んで授かった我が子が、何の障害もなく生まれてくることを願わない親はおりません。だからこそ、胎児診断や生まれた時に障害があると分かった時、お母様達は悲しみ、途方に暮れて泣いてしまうのです。この記事のコメントを見ていただければお分かりになるとおりです。
      決して、何も考えずに「産んでよかった」と思っているのではありません。口唇口蓋裂があると分かった時、お母様たちは自分を責めてしまいます。赤ちゃんに申し訳ない気持ちで一杯になります。それでも赤ちゃんは生まれ、育っていきます。その葛藤を乗り越えたときにはじめて「産んでよかった」「生まれてきてくれてありがとう」と思えるのです。この記事の方のように、生まれてから口唇口蓋裂とわかり、そのことを周囲に責められたりすれば、とても生まれた時の写真を残す心の余裕はないかもしれません。写真に現像・焼付など他人の手が必要な時代は、さらにハードルが高かったと思います。

      赤ちゃんが生まれてからは日々のケアや口唇裂、口蓋裂、骨移植の手術、歯列矯正、言語治療に全力を尽くします。うちの子はまだ口唇裂手術前ですが、日々考えることは手術の準備に万全を尽くすことです。

      確かに審美的な手術の重要性は、機能的改善を目指す手術と比べると、以前は現在ほど認識されていなかったかもしれません。私と同世代くらいの近所の女性は、高校を卒業するくらいまで口唇裂の手術痕が目立っていました。しかしそれも10年前くらいに久々にお会いしたら綺麗に治されていました。

      そして、手術痕や鼻の形のことで苛めをうけたり、嫌な思いをしたというお話を伺うこともあります。口唇口蓋裂の状態は人それぞれですし、どうしても手術が複数回になり、治療が長期間に及ぶこともあるでしょう。外見ばかりでなく、発音がうまくいかない場合にも、その子の心に傷を残してしまいます。

      親としては、外見や発音で子供が辛い思いをしないよう全力を尽くしますが、他の兄弟もいれば、とにかく忙しくなります。子供の立場からすれば、辛い手術や矯正治療・リハビリばかりで、いつも忙しくして、親が自分に愛情を注いでくれていない・・・と感じるかもしれません。そのように感じさせないようにするのは、やはり親の責任だろうと思います。

      どうすれば子供に、「私はかけがえの無い大切な存在である」ということを実感してもらえるか。それは障害のあるなしに関わらず、親に課せられた最大の課題であると思います。

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    2. 健常な子でも下らない事、ひょんな拍子で苛められたりするのに
      手術痕も鼻の形も声も発音もおかしな子が
      いじめを受けないで済む理由なんて到底ないですからね。

      表を向けば指を刺され、嘲笑され
      口を開けば真似をされ、何度も聞き返され
      つばを吐きかけられたり、石をぶつけられたり、殴られたり
      自分という存在が如何に無意味で無価値な存在であるか
      というのは嫌というほど実感させられましたね。
      今時の子だと、携帯やスマホで撮影して笑いものにでもするのでしょうか。

      そういう事をしながら楽しい学生生活を送っていた人達が
      やがて結婚し、子を授かり産んでみたら口唇口蓋裂だった。
      やれどうしたらいい~、綺麗に治る病気だから~
      親は責任を感じて自分を責めてしまう~
      1/500で偶然生まれるから悪くないんだ~
      そういうのを見ていると何とも言えない気持ちになります…。

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    3. おはようございます。

      学生時代に辛い苛めに遭われたのですね。
      確かに何が原因で苛めに遭うかは分からない世の中です。

      私も幼稚園から小学生の頃、体の成長のアンバランスから酷い言葉を浴びせられたものです。その言葉は30年以上経った今でも覚えていますね。それを連呼していた子達の顔も。
      言葉だけならまだしも、高い所から突き落とされて頭蓋骨を骨折し、骨折の治療と恐怖から数ヶ月間休んだこともあります。今でも額に傷が残っています。それでも、骨折での入院中や療養中に、クラスの多くのお友達から絵入りの応援のお手紙を頂いたりして、ゆっくりですが復帰することができました。

      貴方が過酷な苛めを受けていたとき、またはその後、御両親に言ってもらいたかったのはどんな言葉で、してもらいたかったのはどんな行動ですか?
      逆に、御両親の言動で貴方を苦しめたのはどんなことですか?

      本当の意味でそれが分かるのは、当事者である貴方だけです。そして、多くのお母さんが不安に思っているのはまさに、貴方が経験してきたようなことだと思います。

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    4. そういう経験が無い親がどんな事を言っても
      それはキレイ事、ズレた意見で
      心に響かないなんて子供でも分かりますよね。

      子供を苦しめるのは、苛めや差別より親の無責任な言動だと思いますね。

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  7. はじめまして。何気にブログ村を徘徊していて、記事を目にして覗きました。
    あなたのやさしい言葉かけに涙が出ました。本当にお優しいですね。
    私の次女も口唇裂です。
    今は5歳で11月に修正手術を控えています。
    エコーではわからず、産んでからわかりました。
    私は、産んですぐにお医者様から『赤ちゃん、お口がちょっと裂けているけれど、
    今は医療技術でとってもキレイになりますよ。お母さん、お父さん、誰のせいでもありません。』とはっきり言って赤ちゃんを私の胸に抱かせてくれました。
    私はその言葉掛けのおかげで、『あらそう。治るのならよかったわ。』と楽観的にとらえる事が出来ました。
    主人は違いましたが(笑)
    その一言がなければ、きっと自分を責めていた事でしょう。
    人への言葉掛けってとっても重要だな。ってこのブログを読ませてもらって改めて思いました。
    息子さん、まだ小さく、心配事もあると思いますが、
    今は本当に医療技術が発達していて、とってもとってもキレイに直してくれます。
    もちろん、ナシには出来ないけれど、いじめや中傷ををはねのける強い精神力を育ててあげてくださいね^^
    うちの子も時々言われますが、『それがどうしたの?ママのお腹の中でケガして産まれてきたから、病院で治してもらったんだけど?』と5歳で言い返しています(笑)

    ※どうすれば子供に、「私はかけがえの無い大切な存在である」ということを実感してもらえるか。それは障害のあるなしに関わらず、親に課せられた最大の課題であると思います。

    こちらもとっても素敵なお言葉です!私も肝に銘じて子育てしたいです^^

    長々と失礼しました。

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    1. Keicoさん コメントありがとうございます。

      御出産時にわかったのですね。今日の矯正歯科受診で待合でお話を伺ったお母様も、産んだ時に判ってドタバタでしたと仰っておられました。そういう時のお医者様のお声掛けはほんとうに重要ですね。

      お嬢さんは5歳にしてその強さ、素晴らしいです。Keicoさんがしっかりお嬢さんの心を育まれた証拠ですね。ウチの息子もそのくらい言えるように育てたいものです。

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