2014年12月26日金曜日

生後604日目 なぜ優生思想はダメなのか

出生前診断を扱ったNHKの番組が再放送されていた。

シリーズ 選ばれる命 第1回 問われる出生前検査

ただ、我が家は現在TVアンテナが不調(ブースターが壊れているらしい)のため、なんとTVは10インチタブレットのワンセグでしか視聴できない。なのでニュースと天気予報くらいしか観ておらず、再放送は観ていない。番組内容はリンクから全て確認することはできる。

我が子に障害がありませんように、と願うのは親ならば当然の気持ちだ。高齢出産が増えてきたこともあって、出生前診断の件数も増えてきているという。だが、出生前診断はその精度とは別に、多くの課題をはらんでいる。
  • 発見できる障害はごく一部
  • 障害の可能性が高いと診断された後の決断をサポートする体制の不足
  • 診断から決断までの時間的余裕はほとんどない
  • 産む/産まないのいずれにしろ、親(特に母親)のアフターケアの体制は十分と言えない
  • 遺伝子など、単純な基準による生命の選別の弊害
一方で、出産前に赤ちゃんの障害を知ることで、その子を育てていくための、親の心理や環境面の準備ができるというメリットももちろん存在する。

個人的には、単純な基準で胎児の選別を行うことは優生思想に繋がる可能性が高く、賛同できない。ただし、障害を持った子を育てる、その負担を主に負うのは母親・父親であり、産むか産まないかの判断はあくまでも両親に任せるべきだ。そして、障害を持った子を育てるということは、負担ばかりではない。健常な子と同様、もしかしたらより多くの喜びも与えてくれる、かもしれない。

なぜ私は優生思想に賛同できないのか。

もちろん息子が口唇口蓋裂を持って生まれてきたということも影響している。でなければ、子供の障害についてこれほど考えることもなかっただろう。息子もいずれ成長し、独立して家庭を持ち、 子供を授かるかもしれない。その時、息子自身が持って生まれた先天的な障害のことで、子供のことを心配するだろうと思う。だとしても、「遺伝的に優れた個体を優先して残す」という思想には私は賛同できない。

なぜなら、人間は個体の能力のみで生存競争を闘う野生動物ではないし、肉質や繁殖能力が高いことが良しとされる家畜でもなく、「社会性を武器として集団として生き残ってきた種」であるからだ。

例えば、移動能力で言えば人間は鳥類や馬には到底及ばない。格闘能力で言えば、素手でクマやライオンに勝てる人間はほとんどいないはずだ。そんな能力で人間を選別しても意味が無い。

人間は社会を形成することで高度に分業を行い、文明を発達させてきた。そこで重要だったのは協調・協力しあうことを前提とする慣習や社会制度だ。何かの能力に劣っている個人がいたとしても、他の才能で貢献できるように集団が支えることで、集団全体としての能力を高めることができる。優れた能力をなかなか見出すことができない子供がいたとしても、その子供を含む集団は、そうした子供をケアするスキルを高めることができる。

イギリスでは障害を持った子供を普通の学校のクラスに受け容れる義務があるそうだ。 もちろん障害を持った子供自身も成長することができるわけだが、健常な子供達にも大変よい影響がある。自分との違いや人それぞれの個性を尊重すること、ハンディのある人に対する接し方を学ぶことができる。もし、障害のある子もおらず、一様に「遺伝的に優良」な子供ばかりであれば、そうした成長も期待できない。多様性は失われ、環境や必要とされる能力が大きく変わった時に、集団として適応できない事態になるだろう。

障害はその子にとってまさにマイナスであるかもしれないが、集団として長期的に見ればプラスの面もあると、私は思っている。

・・・
息子が昨日やっていた遊びは、ダイニングと「フリースペース」の間の戸のところで行ったり来たりすること。せっかく暖房しているダイニングに冷たい空気が流れこんでくるので、やめてほしいのだが・・・(^^;


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3 件のコメント:

  1. そうですね。人間一人で生きているものではないですからね。 優生思想は、単なる妄想で、本来の価値は、心の質だと思いますね。 勿論価値判断は人それぞれですが、優性思想の典型は、ヒットラーですからねえ。 アメリカでもこの思想は強くありますが、平和な住みやすい国とは、程遠い。 その思想が間違っていると思って育てられるお子様は、普通に育てられる子よりずっと幸せだと思いますよ。
    子どもの遊びには、意味・目的があるようです。 それを探す事が楽しい! 子育てのだいご味!うらやましいです。
    東京の老人より。

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  2. リラクマコ2014/12/27 3:46:00

    私は、出生前検査はいらないと思う人です。だって、約30年前はありませんでしたよ。あったら私の母は、私を産まなかったでしょうか?そんなことはありません。私は脳性マヒ性の下肢障害者です。それから、ちょっときつい言い方します。障害はマイナスではありません!クラッパさんは、父親として、心配なのはわかります、しかし、親がマイナスなんて考えたらダメなんです。自分は障害者でかわいそうなんて考えに転ぶ可能性があります。障害がマイナスなんて考えは健常者のエゴにしか聞こえません。こどもは誰でも成長したら、いろんなことにぶつかります。しかし、それは障害者であることで、
    プラスどころか、人より何倍も経験が豊富になります。私自身も、辛すぎて、何度も挫折しかけましたが、環境が変わるたびに親は精神的に支えになってました。ただ、私も親になりました。心配ですよ。障害うんぬんではなく、日々成長がね~(^◇^;)クラッパさんは、勉強をよくしていらして、いいとは思います。ですが、考えすぎな気もします。すいません。

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  3. よーこママ2015/01/01 7:46:00

    出生前検査…今は難しい時代ですね。
    私も受けてなかったと思います。
    受けてしまったら、もし何か障害があるとわかったら迷ってしまったでしょう。
    まぁこれは今現に息子に障害があるとわかったからだと思いますが。
    今はこれも息子の個性と思って日々を楽しく過ごしてます。
    もちろん、私の子供に産まれてきてくれたことにも感謝してます!

    子供の成長は早いもので、毎日楽しいですね~やっと数歩歩けるようになりました。
    息子さんもますます好奇心旺盛なお子さんになってますね(*^ー^)ノ♪
    育児ライフ楽しみましょうね。

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