2015年4月7日火曜日

生後706日目 「口唇口蓋裂の治療は○○が一番」?

若い人の間で有名な方に最近お子さんが生まれ、お子さんが口唇口蓋裂であることをTwitter上で明らかにしておられた。父親として育児・治療に頑張る!という気合が感じられて、約2年前の息子が生まれた時の気持ちを少し思い出した。

誕生まで

とはいえ、口唇口蓋裂の治療は長い道のり。焦りすぎては疲れきってしまう。健常児であっても生後3~4箇月は戦争に例えられるほどしんどい。まして、口唇裂がある子は生後3箇月くらいで手術を受けなくてはならない。お母さんの肉体的・精神的負担はかなりのものになるので、ぜひお父さんには落ち着いて、「奥様のケア」を十分にしていただきたい。

そのお父さんのツィートに対して、ファンの方から多くの激励のリプライが付いていた。その数から、結構有名な人らしい、と思ったわけだ。全てが善意のリプライなのだが、私から見ると少し気になるツィートがあった。

「口唇口蓋裂の治療は○○病院が一番です!」

といったものだ。発言の主に全く悪意はないと思う。

だが、こうした発言は控えるべきだ。理由はいくつかある。

まず、何をもって「一番」なのかが分からない。おそらく単純に「印象」で言っているのだろうと思うが、順位付けするからには客観的な基準が必要だ。症例数なのか、瘢痕の綺麗さ(どうやって数値化する?)なのか。そうした基準なしに印象で「一番」と言っても意味が無いだろう。

そして、これが重要なのだが、治療を行う医療機関を選択するのは当事者および保護者であって、その際には、様々な事情を勘案しなければならず、他人の言う「一番」の医療機関ではない病院で治療を受けなくてはならない場合のほうが多いということだ。

口唇口蓋裂の治療は頻繁に通院・入院し、20歳前後までの長期間続くので、当然地理的な制約が出てくる。一部の人が思っているように、1~2回手術するだけで跡形もなく治る・・・のならば、「一番」の病院で治療も可能かもしれないが、実際には「普段通える範囲」の病院で治療を受けることになる。

また、口唇口蓋裂の他にも何らかの疾患を持っていて、そちらの方が緊急性や重要度が高い場合には、その疾患に熟練した医療機関で治療を受けるから、口唇口蓋裂の治療だけを基準に選ぶわけにはいかなくなる。

こうした理由で他人が言う「一番」の病院に診せられないご両親がおられたとして、その方が上記のような発言を目にしたらどう思うだろうか。そうでなくてもお母さんは、お子さんが口唇口蓋裂を持って生まれてきたことを「申し訳ない」と思っている部分がある(もちろんお母さんに責任は全く無いのだが、これは理屈抜きにそういう心情になってしまう)。そうしたお母さんに、またもや「一番の病院に診せてあげられなくてごめんなさい・・・」と思わせてしまうのではないか。もちろん気にしない方もあるだろうが。

以前、美容クリニックの院長のツィートでも同様の発言を目にしたことがある。出身校を持ち上げたくなる気持ちは分からなくもないが、医師の発言としては軽々に過ぎるだろう。

医療機関によって口唇口蓋裂の術後経過などの違いは多少あるだろうが、実際には、術後の傷痕の状態、構音の発達などはお子さんの個人差のほうがはるかに大きい。口唇口蓋裂のお子さんを授かった御両親には、「治療が無理なく継続できること」を第一優先として、治療を受ける医療機関を選んでほしい。

・・・


昨晩の息子のソフト積み木遊び。写真は5段だが、最高6段まで積み上げられるようになった。妻が積み上げにくい形状(半円柱など)の積み木をそっと隠すというアシスト付きだが(笑



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